皮膚の病気になったり、その治療中である場合、学校の授業でプールに入っていいかどうかが気になるところですね。症状が悪化したり、まわりにうつしてしまったりといったことが心配で、保護者様からよくご質問いただきます。
この点について、2015年に、日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会の医師・専門家が協議した上での統一見解が発表されています。
原則として、当院もこの統一見解に沿ってプールの許可・不許可を判断しております。以下でご紹介しますので、ご参考ください。
とびひ(伝染性膿痂疹)
かきむしったところの浸出液、水疱内容などで次々にうつります。
プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがありますので、プールや水泳は治るまで禁止してください。
とびひ(伝染性膿痂疹)はどんな病気?
黄色ブドウ球菌または化膿レンサ球菌に感染し、発症します。
顔、手、足など、衣類に覆われていない露出部に水疱ができます。この水疱は簡単に破れてしまいます。その後かさぶたとなります。その他、かゆみ、発熱、喉の痛みなどの症状が見られることもあります。
感染から発症までの潜伏期間は2~7週間と言われていますが、場合によっては半年ほどの長期潜伏をすることもあります。
自然治癒が期待できますが、感染拡大防止のため、摘出・除去による治療を行うことがあります。
みずいぼ(伝染性軟属腫)
プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮き輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けてください。 プール後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。
みずいぼ(伝染性軟属腫)はどんな病気?
伝染性軟疣腫ウイルスへ感染し、発症します。
胴体、手、足、腋、股など、皮膚が薄くかつ摩擦が起こりやすい部位に、赤っぽいいぼが生じます。いぼといっても、艶があり水ぶくれのように見えることが多くなります。通常、痒みはほとんどありませんが、爪などでかいてしまうと症状が悪化し、かゆみを伴うことがあります。
感染から発症までの潜伏期間は、2~10日程度です。
皮膚を清潔に保ち、外用薬などで治療します。内服・点滴による抗菌薬の使用を行うこともあります。
あたまじらみ(頭しらみ)
アタマジラミが感染しても、治療を始めればプールに入って構いません。ただし、タオル、ヘアブラシ、水泳帽などの貸し借りはやめましょう。
頭しらみはどんな病気?
人と人が頭を寄せ合うような場面で、髪の毛が接触して感染します。幼稚園や保育園、学校の他、学習塾などでも感染リスクがあります。
感染すると、あたまじらみが頭皮から吸血し、強い痒み、湿疹などの症状が現れます。卵で0.5ミリ、幼虫で1ミリ、成虫で2~4ミリの大きさとなります。卵は10日ほどで孵化し、幼虫・成虫いずれも吸血します。
かゆみから頭皮をかき、とびひが起こるケースも見られます。
治療では、洗髪、梳き櫛の使用を10日程度継続します。シラミ駆除薬(スミスリンシャンプー)の使用も、選択肢のうちの1つです。
決して室内が不潔だからかかる病気ではありません。一度受診してください。
疥癬(かいせん)
肌と肌の接触でうつります。 ごくまれに衣類、寝床、タオルなどを介してうつることがありますが、プールの水ではうつることはありませんので、治療を始めればプールに入っても構いません。 ただし角化型疥癬の場合は、通常の疥癬と比べて感染力が強いので、外出自体を控える必要があります。
疥癬(かいせん)はどんな病気?
ヒゼンダニというダニが皮膚に感染します。体長400μmと、ヒゼンダニを肉眼で確認することはできません。
ヒゼンダニの数に応じて、「通常疥癬」と「角化型疥癬」に分けられます。
治療の際には、どちらもヒゼンダニを殺す塗り薬・飲み薬が使用されます。
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通常疥癬
数十匹以下のヒゼンダニの感染です。
首から下の全身に、赤いブツブツが生じ、強い痒みを伴います。 感染力は比較的弱いとされていますが、長時間肌が触れ合っていたり、時間を置かずに寝具を共用するなどして感染することがあります。 -
角化型疥癬
100万~200万のヒゼンダニの感染です。 垢が増えたような角質増殖が特徴的な症状です。 感染力が強く、短時間の皮膚接触、寝具の共用の他、皮膚の垢を介して感染することがあります。
かゆみを伴うこともありますが、まったくかゆくないということもあります。